マルチの女

Y子は千葉県出身で、国立大学に在学している時分、公認会計士試験に合格した。 最大手の外資系監査法人に就職したが、監査法人の仕事はブラックで終電帰りもザラだった。 学生時代から付き合っていた男は浮気して離れて行った。意識が朦朧とし、その間どのよ…

Smell of rain drops, want to say you'll be alright.

高校生のとき、当時遠距離で付き合っていた彼女に会うために、バイクの免許をとった。 当初は交通機関を使って通っていたのだけれど、バイクがあれば色んなところに彼女を連れて行けるし、彼女をバイクの背に載せて海辺を走るような、そういう青春に憧れてい…

In to the wild.(荒野へ)

鏡の向こうには、グランドキャニオンが広がっていた。 それを見て、おれはただ、立ち尽くすしかなかったのだ。 先月某、髪の毛を切りに近所の1,000円カットへ出かけた。どうせポマードで整えるのだ、高いところへ行く必要はない。 7・3のツーブロック、サ…

自分には、ほとほと失望した。

ある朝、まだほの暗い時間帯に、少し早めの電車に乗った。 もう30分もすれば身動きがとれないほどの人であふれる乗車駅だけれど、この時間ではまだ「ふつうに立って乗ることができる」。 発車し、寝起きのぼんやりした頭で景色を眺めていると、まもなく次の…

いつもいつでも。

「死のっか、もう、一緒に」 昨年の春頃に会って以来、A子とは音信不通になっていた。 https://www.datchang.work/entry/2018/12/13/000000 数か月ぶりに連絡が来たのは昨年の末頃で、おれは家から外へ出ることさえ容易なことではなくなっていた。 もうここ…

後ろ手に束ねた 恥じらいの花束が揺れる 

都会のサラリーマンなんて、字面で見れば華やかに見えるけれど実際のところ物理的に拘束されてその我慢料を手にしているだけに過ぎない。 そうして毎日時間と心を切り売りしている内に、トルストイが家庭の幸福の中で「人生における唯一の確かな幸福は、他人…

世界最大級の廃墟 華南モールからの脱出

数年前、中国の東莞という南方の都市を旅しているときに「華南モール」を訪れたことがある。 華南モールは一時世界最大になったこともある中国最大のショッピングモールで、中国のいわゆる建築バブルのときに建造された。 ところがその広さゆえに十分なテナ…

家へ帰ったことに免じて

深夜、満身創痍の身体を引きずって家の扉を開くと、暗い廊下の奥で干してある洗濯物が人の姿に見えることがある。 首を吊って、風もなくギシギシと音を立て揺れる自分自身の亡霊だ。 壁の電気を点けると亡霊は消え、いつもの何もない部屋がある。 部屋には大…

夜明けの西成・泥棒市場

まだ陽の昇らない時間帯、空気は肌を刺すように凍てついている。 紆余曲折あって数年ぶりに大阪は西成区のあいりん地区にいた。 朝の5時くらいになると、労働福祉センターの周りにはホームレス崩れの日雇い労働者を現場まで連れて行く為のバンがちらほら現…

サンフランシスコの韓国人

10年前、サンフランシスコに短期留学をしていた。 そのとき撮った写真を見返していたら、一人の韓国人の女の子のことを思い出した。 名前を彗林(hye lim yoon)といった。 韓国人らしい顔つきの美人で、いつもヒョウ柄や妙な色味のちょっとどこかエキセント…

1万アクセスありがとうございます!

当ブログは開設凡そ1月半で10,000アクセス達成しました。 昨年末、精神的にかなり追い込まれてネットで死ぬ死ぬ言っていたのですが、某氏から「どういう経緯で死ぬのか書いておきなよ、残された人には色々あるんだから」と言われたのが切っ掛けで遺書代わり…

何億年も前につけた傷跡なら残って

目を覚ますと、いつもの天井だった。 カーテンから白い光が差し込んで、塵の浮いた部屋の空気を照らしている。 嫌な汗をかいている。思わずため息をついた。 また、いつもの夢を見た。 * 中学の頃、ネットでは中高生の間で「前略プロフィール」というサイト…

死にたい。いつからか、そう思うようになった。

死にたい。いつからか、そう思うようになった。 自分が恵まれてないなんて思わない。 そりゃ上を見たらキリがないけど、やりたいように生きてきたと思う。その割には多くの人に愛して貰った。 そして世の中にはおれよりバカでブサイクで、どうしようもない人…

改稿と写真追加のお知らせ

以前書いた中国湖南省旅行記に出て来るP子が出産したという報告が入りました。 男の子で、名前を「奕博」というそうです。 博奕(バクチ)を子供の名前につけるなんていかにも中国人らしいなぁ、と思って笑いました。 P子いわく「奕:阳光,积累,昂扬。博:…

祖父の友人の話

1950年代の終わり、東京の新橋。 男は友人から流行らないバーを買い受け、経営を始めた。 それは後から考えてみれば半分酔狂のような雑な経営で、当然バーが赤字から回復することはなかった。 男には投機癖があった。 焦った男は、バーの経営を補填したい一…